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遺産が分からない場合の相続税の申告<令和2年3月>

 父が亡くなりました。相続人は母、兄、私の3人です。兄は両親と同居し、父の財産を管理していました。兄と私の仲が悪く、遺産分割の協議をすることができず、遺産の内容を教えてもらえません。父名義の自宅(建物と土地)だけでも基礎控除額を超え、相続税の申告が必要だと思われます。どのようにして申告をしたらよいのでしょうか。

 相続税の申告は、相続人が共同してどのような遺産があるかを調べ、把握した遺産の分割協議を行ったうえでひとつの相続税申告書を作成するという手順を踏みます。しかし、おたずねのケースは、遺産の把握や分割協議が相続税の申告期限内に行えないことが想定されます。

 このような場合においても把握できる遺産の時価が相続税の基礎控除を上回るのであれば通常の相続税申告と同じく申告期限内に相続税の申告が必要となります。具体的には、各相続人が法定相続分で遺産を取得したものと仮定した価額により相続税申告書を申告期限内に提出し納税することとなります。なお、遺産分割が済んでいない状態で行う相続税申告は、小規模宅地等についての課税価格の計算の特例や配偶者の税額軽減が適用できないため注意が必要です。

  その後相続人同士の協議がまとまり実際の遺産分割が行われたとき、その遺産分割内容に基づき計算された相続税がすでに提出した相続税と異なるときは、これを訂正するために修正申告(不足分の追加納税)又は更正の請求(納付が多かった場合の差額の返還請求)をすることとなります。

  また、相続税申告書を提出する際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことで、当初の相続税申告において適用できなかった規模宅地等についての課税価格の計算の特例や配偶者の税額軽減が適用できる可能性があるため、たとえ相続税の申告期限内に遺産分割協議がまとまらなかったとしても、その後のことを想定して相続税申告書を作成することが望まれます。

  詳しくはお近くの税理士にお気軽にご相談ください。

(東京地方税理士会山梨県会・田中雅樹)

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