「分離課税」の疑問点(令和3年8月)
国民に等しく課税されるはずの所得税率は、1つだけではないのですか?
はい。所得税は、あらゆる所得を合算して、それに超過累進税率を課す「総合課税」が基本です。しかし、金融所得については「株式市場活性化のため」といった理由で長年、申告分離課税あるいは源泉分離課税が定着しており、複数税率が存在しています。
なぜ、そんなルールになっているのですか?
1953年以降、「朝鮮戦争の特需に対応するため」というよく分からない理由で、当初は株式譲渡益は原則非課税でした。ですが、あまりに不公平税制との批判がさすがに出て、そのあと徐々に税率が上がり、2014年からは現行の20%になりました。しかし、それでも先進国の株式売買に課せられる税率としては相対的に低いです。
お金持ちの人だけに有利な税制では?
そういう見方をされても仕方がない部分はあるかもしれませんね。総合課税での最高税率が45%ですから、株式売買でもうけた人にとって有利なのは事実でしょう。特に問題なのは、高所得者層ほど所得に占める株式等譲渡所得の比率が大きいために、所得が1億円を越えると所得税負担率が下がるという統計結果が出ています。
それは納得できない国民も多いのではありませんか?
そうですね。「税負担の公平性」という観点で今後、再考の余地はあるでしょう。
(回答者:眞﨑正剛税理士)
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