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相続の遺産分割協議が遅れてしまう場合の注意点<令和元年7月>

 父が他界したため、遺産について相続税の申告をしなければなりません。現在、相続人全員で遺産分割協議を進めていますが、遺産の分割が決定するまでには相当の時間がかかってしまいそうです。この場合、相続税の申告をする上で何か問題はあるでしょうか?

 遺産分割をいつまでにしなければならないという決まりはありませんが、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内)までに遺産分割が決まらなかった場合、相続税の計算上不利になることがあるので注意が必要です。

 申告期限内に遺産分割が決まらなかった場合不利になる点は以下のとおりです。

  • ①配偶者の税額軽減の特例の適用が受けられない
  • ②小規模宅地等の評価減の特例の適用が受けられない
  • ③相続税の物納の適用が受けられない
  • ④農地の納税猶予の特例の適用が受けられない

 ただし、相続税の申告書の提出期限までに相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が分割されていない場合において、その分割されていない財産を申告書の提出期限から3年以内に分割し、配偶者の相続税の軽減、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例等の適用を受けるために、その旨を届け出る手続きがあります。相続税の期限内申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、上記①と②の適用を遡って受けることができます。また、相続した財産を申告期限後3年以内に売却した場合、納付した相続税のうちその資産に係る部分を譲渡所得の計算上取得費に加算できる特例の適用も受けることができます。

 したがって、相続税の申告期限内に遺産分割を確定させることが原則ですが、長引いてしまう場合、遅くとも申告期限後3年以内には遺産分割を確定させることが税務上有利となります。
 相続税の申告については、早めに税理士にご相談されることをお勧めします。

(東京地方税理士会山梨県会・飯島正樹)

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